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You Gotta Shoot 'Em in the Head (Demo)


 安い自動小銃をガチャつかせ、柔らかな頬を引き締めて、燃えるような目をした少女の隊列が、進んでゆく。
 行かないで、と私は言う。さようなら、と彼女たちは言う、神のために死ぬことが嬉しいと笑う。
 神のために命を捨てるとき。己が命の愛おしければ愛おしいほどに、死への跳躍は勢いを増す。
 天国へ、くるくる、きりもみ、落ちてゆく。死ね、死ね、死ね、の叫びの声に、引きさらわれて、消えてゆく。
 私の伸ばした手は、むなしく空をつかむだけだ。引き留めることはできない。生の野暮ったい重みを脱ぎ去った彼女たち、その軽やかな飛翔に私は、決して追いつくことができない。

 蓉子は私を腰抜けと罵る。江利子は私の銃をタマ無しと笑う。
 私は人を撃つことが出来ない。
 人を殺すことが出来なければ、生きていくことの出来ないこの終末にあって、私はどうしても人を撃つことが出来ない。
 ならば、私は生きていたくないのか?
 そうかも知れない。死ぬことなんて考えもしなかった、でも本当に?

 瓦礫の上に寝転がり、真っ青な空を眺める。
 薄い雲がゆっくりと流れていく、じっと見ているうちに平衡感覚を失い、身体が空に吸い込まれていきそうな錯覚を覚える。
 ラジオから、大昔のショック・ロッカーの濁声。
 親愛なる神様、空は銃創のように青い、親愛なる神様。もしあんたが生きてたら、分かるだろ、俺たちがあんたを殺してやる。
 だけど、知ってる? 神様は自殺したんだよ。
 あの戦争は、神様のせいで起こった。人々は、自分達の神様こそが正しいと信じて戦い、神様の名を借りて商売をする連中がそれを煽った。それから、結果はご覧のありさま。何もかもがおじゃんになった。文明はゆっくりと死を迎えつつある。もう二度と、かつての繁栄を取り戻すことは出来ないだろう。そして人間が死に絶えた時、神様も消え去る。
 つまり、先の大戦は、神様の自殺に他ならなかったという訳だ。人類最後の世界大戦、それは神が自分のこめかみに向けて放った、一発の銃弾だった。神は今や、ゆっくりと息を引き取りつつある。
 死ぬなら勝手に一人で死ねばいいものを。子どもを道連れに無理心中する親みたいな身勝手さだ。
 畜生。
 開闢以来、神のために流される血の絶えた試しはなかった。
 それは世界が終わりを迎えつつある今になってなお、絶える気配がない。神は最後の最後まで、私達の血を求め続ける。
 私の、私の大切な仲間たちの、死肉を喰らい、血をすすり。今際の時まで、いぎたなく、貪り続ける。
 血に飢えた犬畜生め。
 私の仲間、蓉子、江利子、山百合会のみんな。
 空にマリア様の、慈母の如き微笑みが浮かぶ。
 私は両手でアサルトライフルの形を作って、ゆっくりと手を伸ばし。
(バババババ)
 全身に弾を撃ち込んだ。
 空は、銃創のように青い。そして。
 私たちは死に絶えることで、親愛なる神様、あんたを殺してやる。
 あんたは自殺したつもりだったろうが、実のところ、私たちこそが自殺したんだ。

 ここは自殺の王国だ。誰も彼もが自殺の王様ごっこしてるだけの、ただの子どもだ。
 神様もラジオ伝道師も共産党員も麻薬中毒者も、誰も彼もが死にたがり、自分のこめかみにブッ放す。
 思うに、銃口の向きが相手に向こうが自分に向こうが、結局は同じことだ。
 殺すのも殺されるのも、自分で片を付けるのも。
 銃の筒先だけが、まるで意志を持った生き物のように忙しくあちこちを向いて回り、私たちはただ、銃口の前にボンヤリと突っ立って、その時を待っている。いずれはこうなることが分かっていた、といった表情で。
 神様が人間を操って自殺したのと同じように、私たちもまた銃を操って自殺する。お互いの自殺を助け合う。
 お互いにいがみあっては、自分を殺すように仕向けあう。
 本当は、銃が人間を操っているんじゃないか? 人間が神様を操っているのと同じように。

 世界が静かに死に絶えていく。
 私たちに未来は無い。私たちの生活に、光のもたらされることは永遠に無い。
 温かい寝床も、安らかな眠りも、全ては過去のもの。
 命を燃やし尽くそう。安いガソリンで。爆弾で。火炎瓶で。かつて、核の炎が世界を焼き尽くしたように。
 私達が一人残らず燃やし尽くされたその後も、日は昇りまた沈む。
 世界が終わり、また新しい世界が訪れたとしても、空はいつでも、同じ青。

 いと高き所には、滅びが神に。
 そして、地上には、安らかな死が人々にありますように。


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